大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和62年(ネ)233号 判決

控訴人 ラサミ商会有限会社

右代表者代表取締役 石川ラサミ

右訴訟代理人弁護士 池田保之

被控訴人 環境衛生金融公庫

右代表者理事長 山下真臣

右業務受託者 国民金融公庫

右代表者総裁 吉本宏

右代理人 藤村明朗

右訴訟代理人弁護士 桑原収

小山晴樹

渡辺実

堀内幸夫

青山正喜

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

一  当裁判所も被控訴人の本訴請求は理由があると判断する。その理由は次のとおり付加し、訂正し、削除するほかは、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決九丁裏三行目「請求原因3(一)のうち」を削除し、同四行目「あつたこと」の次に「、難波が当時控訴人の取締役であつたこと」を、同五行目「結果」の次に「(原審・当審)」を加入し、同六行目「請求」から「事実」までを「昭和五八年一月一〇日難波は石川の承諾を得て控訴人の代表取締役に就任し、同月一八日付でその旨の登記がされ、同月二五日辞任し、同年二月一日付でその旨の登記がされたこと、昭和五八年一二月一〇日支払期日の割賦金の支払はされず、貸金残元本は五三〇万円であること」と訂正し、同九行目「前掲」の次に「甲第一号証、」を加入し、同行目「甲第四号証、」、同一〇行目「第一一号証の一、」を各削除し、同末行目「号証」の次に「、証人柳原恒美の証言により真正に成立したと認められる甲第三号証」を、同行目「結果」の次に「(原審・当審)及び弁論の全趣旨」を各加入する。

2  同一〇丁表九行目「右以外の」を「石川はタイ国籍人で日本語の日常会話ができる程度であるため、控訴人の代表者印の管理、」と、同一〇行目「難波が決定し執行し」を「全て難波が行つ」と、同丁裏一行目「八月」を「同年八月」と各訂正し、一一丁裏七行目「ず、」から同八行目「ものでは」まで及び同九行目から一二丁裏六行目までを削除する。

3  同一二丁裏七行目「3」を「2」と、同行目「四号証」から同八行目「恒美」までを「一号証、第三号証、乙第一号証、第八号証、第九号証、第一三号証、成立に争いのない甲第四号証、乙第一二号証(原本の存在を含む。)、官署作成部分の成立については争いがなく、その余は証人柳原恒美の証言により真正に成立したと認められる甲第二号証、同証言により真正に成立したと認められる第五号証(原本を含む。)、第六号証及び同証人」と、同一〇行目「五八」を「五七」と各訂正する。

4  同一三丁表三行目「融資」を「資金の使途を店舗改装のための設備資金とする旨の借入」と訂正し、一四丁表五行目末尾に「その際難波は柳原に対し、店舗は自分が賃借している旨申し向け、同月一二日をもつて賃借人が石川に変更されたにもかかわらず、難波が賃借人となつている昭和五六年一〇月七日付の賃貸借契約書を呈示した。」を、同八行目「金は、」の次に「借入れ申込みから融資の実行までに期間が経過したため、」を、同九行目「謄本」の次に「及び代表取締役難波の印鑑証明書」を、同末行目の末尾に「右認定に反する被控訴人代表者本人尋問の結果(原審・当審)は、前掲各証拠と対比して措信し難く、他に右認定を左右するに足る証拠はない。」を各加入する。

5  同一四丁裏一行目から一五丁表末行目までを削除し、その後へ次のとおり加入する。

「3 右認定の事実によれば、本件借入れ申込みにおける借入資金の使途は、控訴人の経営するバー「アユタヤ」の設備資金とされており、申込書その他の添付書類、更に国金の担当者柳原の実地調査の結果によつても、右借入資金の使途が虚偽であつて真実は難波が自己の利益のために控訴人代表者名義を用いて借り入れるものであるとの疑念を生じさせるような事情はうかがわれず、また、融資実行の直前には難波が控訴人の代表取締役に就任し、その旨の登記を経ていることも確認しており、有限会社において代表取締役が選任されている以上、代表取締役は他の取締役の同意なしに設備資金の借入れ等業務執行権限を有することは明らかであるから、国金が金融機関としての通常の業務の過程において、難波が自己の利益のため控訴人代表者名義で借入れをしたことを知り又は知りうべき状況にあつたとか、知りえなかつたことにつき過失があつたとは到底いえない。したがつて、難波の意思表示に民法九三条但し書を類推適用する余地はないから、控訴人の右抗弁は理由がない。

4 以上の次第で、控訴人に対し、貸金残元本五三〇万円及びこれに対する昭和五八年一一月一一日から同年一二月一〇日まで年八・二パーセントの割合による利息金三万五七二〇円の合計五三三万五七二〇円並びに右残元本五三〇万円に対する昭和五八年一二月一一日から支払済みまで約定の年一四・五パーセント(一年に満たない端数期間については一日〇・〇四パーセント)の割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人の本訴請求は理由がある。」

二  よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却する

(裁判長裁判官 鈴木弘 裁判官 時岡泰 宇佐見隆男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例